若手研究が世界を変える!

【進化生物学】

微生物

目に見えない変わった生き物研究、地球環境を知る一歩に

神川龍馬先生

 

京都大学 

農学部 資源生物科学科(農学研究科 応用生物科学科)

 

 先生のフィールドはこの本から

京大変人講座 常識を飛び越えると、何かが見えてくる

酒井敏、小木曽哲、山内裕、那須耕介、川上浩司、神川龍馬(三笠書房)

私も一部を執筆しているのですが、生き物を専門的に学んだことがない人向けの本になっています。「こんな変わった生き物がいるんですよ」「こんな変わった生き物がこういうところで生きてるんですよ」という生物の研究についての内容だけではなく、地学、法律、経済、工学、物理に至るまで、幅広いテーマが収録されています。

 

研究の内容だけではなく、「変わっててもいいじゃないか」、「周りと少し違っていてもどこかで活躍の場があるはずだ」というメッセージも盛り込まれています。人と違うことを学ぶ、人と違うことをやってみる面白さが世の中にはあるということを知ってもらえる本だと思います。

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 世界を変える研究はこれ!

目に見えない変わった生き物研究、地球環境を知る一歩に

酸素のいらない生き物、元植物の生き物

「生き物」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。イヌでしょうか。ネコでしょうか。植物を思い浮かべる方もいるかもしれませんね。確かに、私たちの身の回りには、目に見える様々な生き物がいます。

 

しかし、生き物というのは目に見えるものだけではありません。例えば微生物など、目には見えない生き物がたくさんいます。そんな目に見えない彼らの中には、変わった生き方をしているものがいます。どちらかというとバイ菌よりも人間に近く、でも酸素が必要ない生き方をしていたりします。

 

元々は植物のように光からエネルギーを得ていたのに、そんな一見便利な生き方をあっさりと辞めてしまって、モノを食べるようになったり、寄生虫になったりした「元・植物」もいます。

 

でも、彼らが「どうやって環境中で生きているのか」という素朴な疑問に、私たちは完全に答えることができません。

 

誰も知らない生き物を発見し、「生き物」の常識を変える

 

地球の環境を必要以上に壊さないようにしていく、これは私たちが今後も地球で生きていくために大事なことです。

 

しかし、地球の環境がどんな生き物で形作られているのかわからないと、人間が良かれと思ってしたことが逆に壊すことになっていた、なんてことになりかねません。私たち人間は、もっと地球のことを知らないといけないのです。

 

目に見えない変わった生き物を発見し、研究することで、世の中の「生き物」の常識を変えてみませんか。それが最終的には、地球の環境を理解して、壊さないようにしていく一番の近道なのかもしれません。

 

(左)研究対象である、光合成している海の微生物、珪藻と呼ばれる生き物です。オレンジ色のものが珪藻のもつ葉緑体です。細胞の長さは1ミリの50分の1程度の大きさです。

(右)白黒写真に見えるかもしれませんが、こちらは別の珪藻のカラー写真です。元々は光合成をしていたのですが、こちらの珪藻は進化の結果光合成をしなくなり、オレンジ色を失ってしまいました。

 

 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

海にどのような生き物がいて、どのようなことをし、そしてどうやって海の環境に貢献しているのか。私たちは知っているようでいて、まだまだ知らないことだらけです。海の環境を必要以上に壊さないためにも、まずは海の中で起きていることを知ることが必要です。私の研究は、その観点から、「海の微生物」を細胞の中から知ることを出発点としてアプローチし、海の中で起きていることを理解しようとしています。

 


◆先生が心がけていることは?

 

食べ残しを出さないこと。

 

 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

学生時代は、赤潮を作って魚を殺したり、毒を出したりする単細胞の生き物について研究していました。そのような生き物がどうやって誕生してきたのかに興味を持ち、卒業後は進化の研究や細胞内で起きている反応について研究を始めたのです。

 

研究員時代の恩師や、海外での研究生活で出会った人たちと一緒に仕事をする中で、「知っている生き物だけじゃなくて、誰も知らない生き物こそ研究をする価値がある」という考えが強くなっていきました。今でもその考えは研究のコアになっています。今思い出すと、学生時代の恩師も似たようなことを言っていました。私の潜在意識に、ずっと刷り込まれているのかもしれません。

 

◆学生時代は

 

回るお寿司屋さんではなく、カウンターのあるお寿司屋さんでアルバイトをしていました。そこでは、叱られ、反省し、また叱られ、を繰り返しながら、いろいろな仕事をしました。皿洗いから床掃除、調味料の準備、食器の準備、飲み物の提供、などなど、不器用な自分が複数の仕事を同時に、かつスムーズに行うにはどうしたらいいかを本気で考え出したのは、この頃です。学内業務を行いつつ、限られた時間で研究も行うという今の働き方は、この頃の経験がかなり生きていると思っています。

 

◆出身高校は?

 

静岡県立浜松北高校

 

日本進化学会参加時に他の研究者の方と議論しているところ。ちょっと熱くなって手の動きが激しくなり気味。

 

 先生の分野を学ぶには

「進化生物学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

7.生物・バイオ」の「22.遺伝学・系統分類学」

 


 注目の研究室や研究の大学へ行こう!

吉澤晋

東京大学

新領域創成科学研究科 自然環境学専攻/大気海洋研究所 地球表層圏変動研究センター

光合成とは全く違う光の使い方で生きている微生物が、環境の中で果たしている役割を理解しようとしています。一つの事を解明しようとする時に、複数の手法を同時に使ってマルチな角度からアプローチする執着力は特筆です。

吉澤先生のページ


宮城島進也

総合研究大学院大学 生命科学研究科 遺伝学専攻

光合成する生き物が一日の間にどういうプロセスで分裂して増えていくのか、その分子メカニズムの研究をしています。旧来から謎とされてきたことを、最新の技術で一歩一歩成し遂げて、答えに近づいていく姿勢が素晴らしいです。

宮城島研究室HP


柏山祐一郎

福井工業大学 環境情報学部 環境食品応用化学科

光合成のために重要な色の素がどうやって作られ、どうやって分解されていくのか、地球の歴史とともに解明しようとしています。地質の解析から、生き物の研究、遺伝子の研究まで幅広く行うフットワークの軽さがあります。

柏山先生のページ

 


 神川先生の研究・研究室を見てみよう

大学では微生物の生理・生態・進化について講義をしています。

 

 先生の学部・学科で学ぼう

農学部は、農業のみに視点を置いているのではなく、生命活動・食・環境を総合的に学べる場です。その中で、海、山、街、様々な場所を対象として多様な研究を行うことができます。研究室の中で実験するだけではなく、野外サンプリング、フィールド調査など、研究の手法も様々です。私の場合は、生命活動に興味があり、海や池などの微生物を対象とすることで、細胞の中から水環境まで広い視点で研究を行っています。

 

 中高生におススメ

MASTER KEATON

浦沢直樹(ビッグコミックススペシャル)

大学教員として研究を続けたいともがきながらも、軍人や探偵として大活躍する主人公が、夢に向かって少しずつでも進んでいく姿に感動します。

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ブラック・ジャック

手塚治虫(少年チャンピオン・コミックス)

「信念」という言葉では言い表すことが難しいくらいの、命への向き合い方に触れることができるマンガです。

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働き方 「なぜ働くのか」「いかに働くのか」

稲盛和夫(三笠書房)

「好きなことを仕事にする」ではなく、「仕事を好きになる」とはどういうことなのか。著者の体験から語られる仕事の本質が、平易な言葉で書かれていて、とても読みやすいです。

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 先生へ一問一答!

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

カナダ。留学先での生活が懐かしい。

 


Q2.熱中したゲームは?

健全な麻雀

 


Q3.大学時代の部活・サークルは?

体育会剣道部

 


Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

お寿司屋