若手研究が世界を変える!

【生体関連化学】

酵素

体を動かす「エンジン」、酵素の複雑なカラクリを明らかに

藤枝伸宇先生

 

大阪府立大学

生命環境科学域 応用生命科学類(生命環境科学研究科 応用生命科学専攻)

 

 出会いの一冊

アンドロメダ病原体

マイクル・クライトン(ハヤカワ文庫NV)

英語版のタイトルは“The Andromeda Strain”となっています。“strain”は菌株を意味し、病原体ではありません。訳者の意図が入ったのかもしれませんが、最後にものの見方を考えさせられます。

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 世界を変える研究はこれ!

体を動かす「エンジン」、酵素の複雑なカラクリを明らかに

酵素は体内の化学反応を進めている

私たちの体は細胞からできています。この細胞一つ一つが働き、体が動きます。細胞の中には生命の設計図と言われる遺伝子が入っており、これをもとに体が作られます。

 

では、何が体を動かしているでしょうか。車で言えばエンジンに当たるものです。答えは酵素です。酵素はタンパク質からなり、筋肉などと構成要素は同じものですが、化学反応をよりスムーズに進ませる働きがあります。

 

酵素は何千種と細胞の中に存在し、色々な化学反応を進ませていますが、このたくさんの酵素が細胞の中で互いに助け合い、必死に働くことで、私たちは考え、行動することができます。

 

私たちの体は生産ライン

 

実はこのたくさんの酵素は、細胞から取り出して使うことができます。私たちが作る車のエンジンよりもはるかに精密にできており、想像もできないような機能を発揮します。

 

使い方次第で、薬や農薬、燃料、果てはプラスチックまで作ることができます。しかも、化学工場と比較してみると私たちの体は環境に悪いものを排出しません。つまり、とてもエコな生産ラインを作ることができます。

 

酵素の働きには補助が必要

 

ただ、酵素は細胞内で互いに助け合っているため、独りでは働けないものや何らかの補助を必要とするものが多くいます。こういった酵素を私たちの技術で手助けしてあげることで利用できる場面がとても広がります。

 

また、そのカラクリは複雑過ぎて今のところ、はっきりしていません。この仕組を明らかにすることは新しい科学原理の発見にも発展し、新しい酵素を私たちの手で創り出すことにもつながります。

 

2019年夏、スイスで行われた学会にて発表している様子

 

 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

生命が効率よく反応を行っていることは中学・高校の授業で習っていましたが、本当にそうなのか、大学に行くまでよくわかりませんでした。大学では主に生物を習ったのですが、電気化学をメインにする研究室に配属し、エネルギーと化学現象の関係を深く学ぶようになり、ようやく生命反応の図抜けた異能を理解しました。

 

でも、実はその反応を司っている酵素の動作原理はまだほとんどわかってないということも同時に知り、これをテーマにしたいと考えました。酵素の利用、探索、創製を通してその作用機構を明らかにし、新たな科学学理に迫れれば最高だと考えて、日々これらに挑戦しています。

 

◆高校時代に

 

阪神淡路大震災が発生し、電気、ガス、水もすべて止まり、将来のことをシビアに考える機会がありました。未来を不安に思うことよりも、自分がその時まで自身の意志で何もしてこなかったことを後悔しました。なぜか古典の勉強を必死にしたことを覚えています。今となってはその内容を何も覚えていませんが…。

 

◆出身高校は?

 

滝川高校

 

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 中高生におススメ

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原作の小説に忠実な別エンディングがこの作品のすべてだと思っています。レンタル版などで見られますのでそちらを見てください。自分の持っている善悪の定義は、絶対の真理ではないことを知らされます。

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 先生へ一問一答!

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

考古学

 


Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

スイス。安全かつ多民族国家であるため。 

 


Q3.研究以外で楽しいことは?

ヤモリ飼育