若手研究が世界を変える!

【生物有機化学】

植物ホルモン

世界から飢餓をなくしたい

「雑草の抑制」と「栄養の供給」を一挙に解決する植物ホルモンの解明

米山香織先生

 

愛媛大学

農学部 生命機能学科(農学研究科 生命機能学専攻)

 

 先生のフィールドはこの本から

ラボ・ガール 植物と研究を愛した女性科学者の物語

Hope Jahren(化学同人)

アメリカの女性植物学者が、男性中心の大学の世界で、大好きな植物について究めようと頑張る自伝です。植物学の専門的な話も折り込まれており、サイエンスにも触れられます。

 

いまだに、「女のくせに」「男のくせに」なんて時代錯誤もはなはだしい、狭い視野での差別を受けた経験がある方にもオススメ。「好きなものは好きで良いし、誰のためでもない、自分の人生を正直に生きる道を選んで良いのだよ!ただし覚悟を持ってね!」と、励まされる内容です。

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 世界を変える研究はこれ!

「雑草の抑制」と「栄養の供給」を一挙に解決する植物ホルモンの解明

雑草を発芽させる物質は、実は、植物の生長にも不可欠

皆さんが生きていて、つらいなあと思うのはどんな時でしょうか。私は、究極にお腹が空いている時です。7歳の息子にも、「今、ママ機嫌悪いね。お腹空いているでしょ!」と指摘されるほどです。私は、飢餓をなくすための研究を行っています。

 

研究対象にしているのは、「ストリゴラクトン」という植物の二次代謝産物です。「ストリゴラクトン」は、アフリカやヨーロッパなどの農業生産に甚大な被害を与えている根寄生雑草の発芽を誘導します。

 

一方で、このストリゴラクトン、実は、植物の根に共生し、植物に養分を供給するアーバスキュラー菌根菌と植物の共生を開始させるためのシグナル物質としても働いています。陸上植物の80%以上がアーバスキュラー菌根菌と共生しており、持続可能な農業生産には、アーバスキュラー菌根菌の力を借りて、十分に栄養を得ることが必要不可欠です。

 

そしてなんと、ストリゴラクトンは、植物の地上での枝分かれや根の形成をコントロールする植物ホルモンとしても機能しています。

 

院生時代に、栄養分とストリゴラクトンの関係を解明

 

ところが、このマルチプレイヤーであるストリゴラクトンは、不安定で壊れやすく、植物は微量にしか生産できません。私は博士課程在籍の時に、養分が足りていない植物はストリゴラクトンをたくさん作るということを、科学的に証明しました。

 

それ以降、ストリゴラクトンはどうやって生産されているのか、どのように植物の内部で生産が調節されているのかを、明らかにすべく研究を続けています。そして、実際の農業生産に利用し、世界の飢餓問題を解決するために貢献したいと考えています。 

 

微量にしか生産されないストリゴラクトンを高感度で検出できる、分析機器LC-MS/MSの前にて

 

 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

ストリゴラクトンがどのように生産され、その生産が調節されているのかを明らかにすることができれば、根寄生雑草の制御とアーバスキュラー菌根菌の最大限の利用が可能となります。その結果、持続可能な食糧生産の増大につなげることができ、飢餓をゼロにできると考えています。

 


◆先生が心がけていることは?

 

買い物袋を持参する。こまめに電気を消す。エレベータではなく階段を使う。車ではなく徒歩や自転車で移動する。フォスタープランで毎月寄付をする。古着を寄付する。海でゴミ拾いをする。 

 

 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

高校生の時に、アジア学院という発展途上国の方が農業を学んでいるNGOを訪問し、農業に興味を持ちました。その後、大学生の時にガーナで植林のワークキャンプに参加しましたが、ひどい下痢になって病院に運ばれ、自分の無力さに落ち込みました。

 

その後イギリスを訪れ、NGO団体OXFAMの「あなたの3時間で井戸が一つ掘れます」というキャッチフレーズに心を鷲掴みにされて、寄付された古着などを販売するボランティアをしました。

 

卒論で配属された研究センターで、「アフリカで飢餓問題の原因の一つとなっている根寄生雑草の研究」と出会い、直接現地で働かずとも、間接的に貢献できる研究に邁進しています。

 

◆大学時代

 

大学受験が終わった翌日からバイト三昧で、お金が貯まると世界を旅していました。オーストラリア、フィリピン、ガーナ、クロアチア、スロベニア、ハンガリー、オマーン。ホテルは予約せずに、現地で直接交渉。現地のNGOが主催するワークキャンプに参加して、植林や学校作りのお手伝いをさせてもらったこともあります。

 

◆出身高校は?

 

栃木県立大田原女子高校

 

客員研究員として在籍したクイーンズランド大学(オーストラリア)のラボメンバーとともに

 

 先生の分野を学ぶには

「生物有機化学」学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)

17.化学・化学工学」の「68.有機化学、合成化学(薬設計の技術)」

 


 注目の研究室や研究の大学へ行こう!

秋山康紀

大阪府立大学 生命環境科学域 応用生命科学類/生命環境科学研究科 応用生命科学専攻

「天然物化学」と「有機化学」をベースとして、重要な生命現象に介在する化学因子について、世界をリードする研究を進めている。ストリゴラクトンがアーバスキュラー菌根菌の共生開始シグナル物質であることを発見し、その後もマイペースに先端を走り続ける一流ランナー。

秋山先生のページ


経塚淳子

東北大学 理学部 生物学科/生命科学研究科 生態発生適応科学専攻

植物のかたちづくりや旺盛な成長をコントロールするしくみを分子レベルで研究している。常に、『Nature』や『Science』などの一流の雑誌に論文が掲載され、尽きることのない探究心を持つ一流の女性研究者。

経塚グループHP


山口信次郎

京都大学 農学研究科 応用生命科学専攻/化学研究所

植物ホルモンが作られてから役割を終えるまでの、生合成・輸送・シグナル伝達・代謝の作用メカニズムの解明を進めている。ストリゴラクトンの新奇植物ホルモンとしての役割を発見し、その深い知識と経験でプロフェッショナルに科学を掘り下げる、世界の山口信次郎。

生体触媒化学研究領域HP

 


 米山先生の研究・研究室を見てみよう

フランス・パリで開催された国際学会での口頭発表

 

 先生の学部・学科で学ぼう

生命機能学科では、有機化合物、タンパク質、核酸、酵素などの分子から、微生物や動・植物細胞、さらに個体に至る様々なレベルの生命現象を化学的手法で解明する基礎領域にはじまり、バイオテクノロジーを駆使した革新的技術の創出、機能性食品や医薬品の開発などの応用領域まで、幅広い展開を目的とした教育研究を行っています。

 

 中高生におススメ

もの食う人びと

辺見庸(角川文庫)

「食」から見える社会問題が広く書かれています。狭い世界で生きている高校生には、広い世界の存在を知って欲しいです。

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SEED

ラデック・鯨井(ヤングジャンプ・コミックスBJ)

これから避けて通れない課題の一つが「環境問題」です。個人的には、この地球は人間だけのものではないのにといつも思っています。

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バッタを倒しにアフリカヘ

前野ウルド浩太郎(光文社新書)

タイトル通りの内容の本。先のことが不安で仕方ない人におすすめです。私はこういう日本人を誇りに思います。でも正直、自分の息子がこういう道を選んだ時、手放しで応援できるかなと自問自答する日々です。

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 先生へ一問一答!

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

医学部。医者になって、診療も研究もやってみたいです。

 


Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

オーストラリア、フランス、オランダ。研究もプライベートも両方思いっきり充実させたいです。

 


Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

米津玄師。最高です。「灰色と青」では菅田もなかなかやるなと思いました。

 


Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

「イルカ先生」という名前で、電話で小学生に勉強を教えるバイト。

 


Q5.会ってみたい有名人は?

QuizKnockのふくらP