若手研究が世界を変える!

【植物保護科学】

線虫

性転換も繁栄のひみつ、線虫の驚異の環境適応力

新屋良治先生

 

明治大学

農学部 農学科(農学研究科 農学専攻)

 

 先生のフィールドはこの本から

極限環境の生命 生物のすみかのひろがり

D.A.ワートン、訳:堀越弘毅、浜本哲郎(シュプリンガーフェアラーク東京)

極限環境生物の多様性や凄さを知ることができる本です。1ミリにも満たない一見するとちっぽけな生物が、砂漠や南極や深海などの極限環境でどのようにして生きているのかを知ることができます。

 

本書を通じて、線虫がいかに環境適応力の高い生物であるかを知ってもらいたいです。線虫以外にも、環境適応力の高い生物の話もたくさん紹介されていますので、変な生物の生き様についていろいろ知ることができます。

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 世界を変える研究はこれ!

性転換も繁栄のひみつ、線虫の驚異の環境適応力

地球上で最も繁栄した動物群の1つ、線虫

地球温暖化、異常気象など「環境変動」に関する記事やニュースを目にしない日はありません。私はこの環境の変化と生物との関係について関心があり、特に線虫という動物を用いて、環境変化に対する生物適応について研究を進めています。

 

線虫という動物についてはあまり馴染みがない人が多いかもしれません。線虫は多くが体長1ミリ弱程度の細長い形状をした多細胞動物です。最近では食中毒の原因となるアニサキスという線虫がよく知られています。意外に思うかもしれませんが、この動物は海、陸問わず様々な種が生息しており、個体数・種数共に地球上で最も繁栄した動物群の1つなのです。

 

アニメのヒーローのごとく、線虫の「変身」

 

私が特に興味を持っているのは、線虫がいかにしてこれほど多様な環境に適応できるのかという点です。アニメや映画などで、ヒーローが変身をするシーンを見ることがあります。線虫という生き物は、これらと同じように状況に応じて劇的に姿を変える術を持っているのです。

 

例えば、農作物に寄生して病気を引き起こすある種の線虫は、宿主の健康状態が悪くなると生育の途中で雌から雄へと「性転換」することで環境変化に対応します。どのようにしてこのような大変身を遂げることができるのか。いかにして進化したのか。疑問は尽きません。

 

さらに私は多様な線虫の環境適応力を理解することで、それを農作物の保護やバイオテクノロジーへと応用展開し、人間の生活へと役立てることも目指しています。

 

研究室メンバーと桜の下で集合写真

 

 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

私が「線虫」という生き物の存在を知ったのは、大学生の時にアルバイトで農作業のお手伝いをしていた時でした。農家さんから線虫という生き物がとても厄介な農作物害虫であることを聞かされました。その後、研究対象として線虫と接するうちに、徐々に彼らの多様性や環境適応力に魅了されました。

 

特に米国で研究をしていた際の調査で、猛毒ヒ素が充満した湖に多様な線虫が生息していることを自分自身で発見した時は本当に感動しました。それ以来、線虫という動物を用いて環境変化に対する生物適応を理解することを主な研究テーマとしています。いろいろな場所に線虫のサンプリングに行く度に、いまだに驚きとワクワクの連発です。

 

◆学生時代は

 

大学生時代と研究員時代にそれぞれ北海道と米国に住んでいました。長期休暇の度に、長距離ドライブをして圧倒的に雄大な自然を満喫し、この経験が生物の環境適応について研究を始めるきっかけとなりました。また、そこで出会えた素晴らしい恩師を見て、自分も大学教員として学生たちと一緒に研究がしたいと志しました。 

 

◆出身高校は?

 

兵庫県立北須磨高校

 

 先生の分野を学ぶには

「植物保護科学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

8.食・農・動植物」の「26.植物科学、育種・作物・園芸」

 


 新屋先生の研究・研究室を見てみよう

恒例の八重山諸島での線虫サンプリング

 

 先生の学部・学科で学ぼう

線虫という生き物について幅広く学ぶことができる「線虫学」の講義や線虫学研究室があります。同様の学問が学べる大学は全国に数カ所しか存在しないため、私たちの強みです。

 

 中高生におススメ

バッタを倒しにアフリカへ

前野ウルド浩太郎 (光文社新書) 

好奇心に突き動かされ、バッタを追いかけ単身アフリカに渡った若き研究者の物語です。待ち受ける様々な困難に負けず、たくましく前へ進む姿が格好良いです。

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時間・愛・記憶の遺伝子を求めて 生物学者シーモア・ベンザーの軌跡

ジョナサン・ワイナー、訳:垂水雄二(早川書房)

行動遺伝学という1つの分野を開拓した偉大な研究者シーモア・ベンザーの伝記。当時の科学者たちの情熱が活き活きと伝わってきて、まるで自分もその時代に生きて研究をしていたかのように錯覚します。

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ミミズと土

チャールズ・ダーウィン、訳:渡辺弘之(平凡社ライブラリー)

「進化論」で有名なダーウィンがミミズを丹念に観察して書いた本。その緻密な観察力もさることながら、一見すると些細な事柄も、見方によっては生物共通の原理を見出すことができることを改めて感じさせてくれます。

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 先生へ一問一答!

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

生物学。特に海の中に生息する変わった生物について学びたい。

 


Q2.大学時代の部活・サークルは?

ラグビー部

 


Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

ひたすら芝生を巻き取るアルバイト、牛の搾乳。