若手研究が世界を変える!

【計算科学】

社会ネットワーク解析

金融機関や放牧牛…。様々なコミュニティを数学で解析

谷口隆晴先生

 

神戸大学

工学部 情報知能工学科(システム情報学研究科 計算科学専攻)

 

 先生のフィールドはこの本から

老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの

増本康平(中公新書)

加齢に伴って人の認知がどのように変わっていくかなど、非常に面白い内容です。また、こういった研究に数学が生かされているということも、興味深いでしょう。

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 世界を変える研究はこれ!

金融機関や放牧牛…。様々なコミュニティを数学で解析

老年心理学や経済学の研究者と共同研究

私の研究は、心理学や経済学、農学などといった、様々な分野に現れる「つながり」の解析を目指したものです。

 

例えば、心理学の分野では、老年心理学の研究者の方と共同で、高齢化が進んだ地区における助け合いの構造をどのように解析すればよいのか、といったことを考えました。

 

経済学の方では、金融機関同士の取引状況などから、どこかの金融機関が破綻してしまった時に、それが他の機関に影響を及ぼさないようにするにはどうすればよいか、といった課題に取り組みました。

 

関係なさそうな分野で数学が活躍

 

また、農学の方では、放牧牛を対象としていました。牛は社会的な動物なのだそうで、コミュニティを作って生活しています。そのようなコミュニティにおける変化を取り出せないか、といったことを研究しました。

 

面白いのは、一見あまり数学が出てこなさそうなこれらの分野で、数学が活躍し、しかも、それが強く求められていることです。

 

アンケート回答の曖昧さも数学で解決できる

 

例えば、他の人との交流の様子を調べたい時には、仲の良い人が何人くらいいるかをアンケートで質問したりしますが、その回答は5や10などのきりの良い数字に偏ります。

 

これは、おそらく正しくない回答ですので、修正が必要なのだと思いますが、「仲の良い人」というのは曖昧ですので、本当の答えは、もしかしたら回答者自身にもわからないかもしれません。

 

そのため、この問題に答えはないかもしれないですが、数学で解決しなければならない、面白い問題になっています。

 

イギリスのBath大学へ共同研究者の先生を訪問した際の一コマ。

左:Bathの町の様子 右:Bat共同研究者の先生が飼っている犬

 

 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

◆先生が心がけていることは?

 

単純な男女だけでなく、もう少し広い意味でのジェンダーの平等に興味があります。特に、研究は好奇心やアイデアがあることが一番重要ですので、広くいろいろな人が活躍できると良いと思います。

 

 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

大学内の会議で、心理学や経済学、農学など他分野の先生方と話をする中で、数学が利用できそうな場面があり、共同研究を始めました。社会科学も含め、どの分野の先生方も、現在では数学を使った研究をしていますので、目標とすることは明確に教えていただけることが多く、共同研究を進めやすかったです。

 

◆高校・大学時代は

 

高校3年の夏頃まで文系のコースで学んでおり、秋頃に理系に変更したのですが、このことは、その後の研究や、その進め方にも影響があったように思います。大学は、どうにか合格することができましたが、合格後の勉強はわからないこと、できないことばかりでした。それでも、頑張っていればそのうちできるようになるという経験から、「できなくても大丈夫」という自信がつきました。

 

◆出身高校は?

 

日出学園高校

 

 先生の分野を学ぶには

「計算科学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

13.IT・AI」の「50.統計、オペレーションリサーチ、高性能計算系」

 


 注目の研究室や研究の大学へ行こう!

室田一雄

東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科/経営学研究科 経営学専攻

【数理工学全般】幅広い分野で活躍している先生で、分野横断的なアプローチによって新しい数学を作っていくという研究スタイルに、影響を受けました。

室田先生のページ


増本康平

神戸大学 発達科学部 人間行動学科/人間発達環境学研究科 人間行動専攻

【老年心理学】さきがけ研究を共同で進めていただいた先生の一人で、議論をしていく中で、新しい数学の役割がたくさん見えてきました。

増本研究室HP 



杉原正顯(故人)

東京大学名誉教授/名古屋大学名誉教授

【数値解析学】博士論文を執筆する際に指導していただきました。様々なことを広く、深く理解している先生で、そのような知識や理解があると、非常に大きな意義のある研究ができることを感じました。

 


 谷口先生の研究・研究室を見てみよう

ここ数年、ピアノをはじめとする楽器のモデリングと物理シミュレーションに取り組んでいます。特にピアノは非常に多くの部品から構成されているため、正確なモデリングのためには高度な数学・情報学の技術を組み合わせる必要があります。

 

 先生の学部・学科で学ぼう

情報系の学部ですが、制御理論や最適化など、かなり基礎的な学問も扱うことが特徴かと思います。そのため、基礎をしっかりと固めた上で、計算機などを利用して応用につなげていくような人が育っています。特に研究室の学生は、実学指向でスーパーコンピューターも使える数理科学者という特徴的な人たちが多いです。

 

 先生へ一問一答!

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

基礎がしっかりしていればどのような学問でも良いと思いますが、語学はしっかり勉強したいです。

 


Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

どちらかというと、発展途上の国に興味があります。失敗を恐れずに新しい技術を作っていこうという活気を感じます。

 


Q3.研究以外で楽しいことは?

ピアノとインド料理。ピアノは研究テーマとしても扱っています。