若手研究が世界を変える!

【生体医工学・生体材料学】

光計測

光で未来の医学を照らす!

ありのままの分子を光で捉え、病気を診断する

南川丈夫先生

 

徳島大学

理工学部 理工学科 機械科学コース(創成科学研究科 理工学専攻 機械科学コース)

 

 先生のフィールドはこの本から

イラストレイテッド 光の実験

田所利康、大津元一(朝倉書店)

光はどこにでもあふれており、身近な存在です。光の探求の歴史は古く、古代ギリシャ時代から研究が行われてきました。しかし、近年になってもいまだに明らかになっていなかった光の特性や応用方法が見出だされ、その多くはノーベル賞の対象にもなっています。

 

本書では、そんな光の不思議な特性の基本的な事項を、きれいな写真をふんだんに使って、丁寧にわかりやすく解説しています。

 

光の基本的な特性を極限まで使いこなすことができるようになると、光で分子を見る技術につながっていきます。本書を通して、光の美しさと魅力に触れていただき、学問領域としての光の可能性について知ってもらえればと思います。

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 世界を変える研究はこれ!

ありのままの分子を光で捉え、病気を診断する

元気な時は、分子も元気

人は、なぜ元気な状態の時もあれば、病気になってしまう時もあるのでしょうか。人の体の中には様々な臓器があります。その臓器は、より細かな機能を持った組織で構成されています。さらにその組織は、細胞やタンパク質、脂質などで構成されています。もっと言えば、それらはすべて分子によってできています。

 

人が元気でいるときは、人を構成している分子が正常に働くことで、細胞や組織、臓器が正常に機能します。一方、病気になる時は、人を構成する分子が変な動きをしています。あるいは、本来そこにあるべきでない分子が存在していることもあります。このように、分子を見るとは、人の状態を正確に知ることにつながります。

 

光で分子の振動情報を得る

 

私の究極の目標は、ありのままの状態で人を構成するあらゆる分子の特性や挙動を捉えることです。その可能性を秘めているものが、光です。

 

光は、波です。また、分子は静止しているわけではなく、振動することがわかっています。この光の波と分子の振動が、実は同じような周波数を持っています。そのため、光を分子に当ててその変化を注意深く観察すると、分子の振動の情報がわかり、その分子がどのような特性を持っていて、どんなふうに動いているかが見えてきます。

 

光の特性を余すことなく使いこなすことで、ありのままの分子の姿を捉えて生命の理を知り、病気を診断し治療する方法を開発する。光の極限に挑むことで、科学や医学の革新を目指しています。

 

学生と自作の光学顕微鏡で計測しているところ

 

 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

あらゆる年齢のすべての人々が健康に生活するためには、生命そのものを理解し、適切な診断と治療を施す必要があります。光を用いた研究は、生命に深く関わる分子を理解することにつながります。また、光を使えば、見た目だけではわからない分子などの情報を得ることができます。これも使えば、これまでの医療を革新し、よりよい医療を提供することができます。

 

これらの目標を実現するためには、光学の専門家だけでなく、医師をはじめとして、装置を作るための機械・電気・情報の専門家、分子を理解するための化学や生物の専門家などとのパートナーシップが必要となり、様々な分野が学際的に活性化していくことにつながります。

 


◆先生が心がけていることは?

 

分野の垣根を作らず、学際的なつながりが環境を作ること 

 

 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

分子を見る技術は、様々な方法が考え出されています。しかし、通常は真空・乾燥・染色・固定・破壊等の処理を行わなければ、その姿を捉えることができません。本来の状態とはかけ離れた分子の情報から、その分子の本来の特性や動きを“推定”しているのが現状です。

 

ですが、“Seeing is believing(百聞は一見にしかず)”の言葉にあるように、分子の特性と挙動をきちんと理解するためには、“推定”するのではなく、分子をありのままの状態で直接観察するほかないという考えにたどりつき、私はこの研究をスタートしました。

 

そのきっかけは、学部学生時代の研究室で光の研究自体の魅力と、分子を見る光学顕微鏡の魅力を知ったこと。またポスドク時代に医学部に所属し、光と医学に可能性を見出したことに強く影響を受けています。

 

◆大学時代は

 

機械工学科に入学し、もともとは流体力学やロボット工学に興味を持っていました。しかし大学3年生の時、自らいろいろな研究室を訪問していた時にフォトニクスと出会い、その魅力を知りました。好きな科目を極めようとする努力は大事ですが、それがすべてではありません。一つのことに固執せず、広い視野を持つことができたのが、現在の研究につながっています。

 

◆出身高校は

 

茨城工業高等専門学校

 

 先生の分野を学ぶには

 「生体医工学・生体材料学」が学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)

 「11.バイオ工学」の「39.バイオマテリアル、ドラッグデリバリー」

 


 影響を受けた研究者は

橋本守

北海道大学 工学部 情報エレクトロニクス学科/情報科学院 情報科学専攻

【分子種や構造を高速に可視化する光学顕微鏡】学生時代に直接指導していただいた先生で、研究に対する姿勢や研究における緻密さ、人生観など様々な点で影響を受けました。

人間情報工学研究室HP 


藤田克昌

大阪大学 工学部 応用自然科学科/工学研究科 物理学系専攻 応用物理学コース

【分子を可視化する光学顕微鏡や超解像顕微鏡】ありのままの分子を見えるようにするバイオイメージング研究分野をリードしている先生。その発想や結果へのこだわりなどに影響を受けています。

ナノフォトニクス領域HP 


永井健治

大阪大学 産業科学研究所

【蛍光タンパク質を用いたバイオイメージング】蛍光という手法を使ったバイオイメージング研究分野の牽引している先生。その研究はもとより、常識をわざとはずした発想のしかたなどにも影響を受けています。

NAGAI Laboratory HP

 


 南川先生の研究・研究室を見てみよう

学生と研究室で議論している様子

 

 先生の学部・学科で学ぼう

機械科学コースは、機械工学全般の基礎から応用までを、体系的に研究・教育しています。また、徳島大学には、ポストLEDフォトニクス研究所という、光を基軸とした研究所が設立され、機械科学コースを含む様々な学科(他の理工学部のコースや医学部も含む)が光研究を軸に融合し、体系的な研究・教育を行うといった特徴を持っています。

 

 中高生におススメ

理系のための独創的発想法

ア・ベ・ミグダル(東京図書)

科学の本質的な魅力はどこにあるのか、また科学への接し方、長期的な視点での勉強の価値などについて書かれています。科学に興味のある理系学生だけでなく、「創造性」について学び、新しいものを生み出そうとしているすべての学生の教養を深める本です。

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100の思考実験 あなたはどこまで考えられるか

ジュリアン・バジーニ(紀伊國屋書店)

大学で研究をする、あるいは社会に出て仕事をしてみると、簡単には答えることができない問題を考える必要が出てきます。本書では、様々な思考実験を通して、「考える」ことがどれほど重要かということを教えてくれます。すべての学生におすすめできる一冊です。

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世界最強の商人

オグ・マンディーノ(角川文庫)

世界中で読まれている成功哲学の名著です。今後、大学や社会で勉強していく上で、その基礎となる普遍的で重要な哲学が書かれています。すべての学生の教養本としておすすめできます。

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 先生へ一問一答!

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

フランスかイギリス(あるいはその他のヨーロッパ)。街のあらゆる場所に歴史がある。美術館や教会などが身近にあるため。

 


Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

ZARD。特に「Forever」がお気に入り。

 


Q3.熱中したゲームは?

テイルズシリーズ(特にテイルズオブファンタジア)

 


Q4.大学時代の部活・サークルは?

フットサル

 


Q5.会ってみたい有名人は?

孫正義