若手研究が世界を変える!

【無機化学】

メタン酸化電池

太陽光とバイオガスから持続可能な電池を開発

松本崇弘先生

 

九州大学

工学部 物質科学工学科(工学府 物質創造工学専攻)

 

 先生のフィールドはこの本から

ARMS

皆川亮二(小学館)

SF科学漫画であり、理系科目が好きな学生は読みながら知的好奇心を満たせるため、楽しいと思う。ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』をモチーフに、ケイ素に基づく生命体が誕生するというストーリー。人間は炭素に基づく生命体だが、炭素の周期表の1つ下のケイ素に基づく新しい生命体が誕生し、これまでの人間にない機能を持つ生命体となっていく。

 

現実味はもちろんないが、炭素とケイ素が同族元素であることを知っている学生ならば、実在可能なのではないかとも思ってしまう。科学が果たすべき役割や人間が守るべき倫理観なども学ぶことができる。

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 世界を変える研究はこれ!

太陽光とバイオガスから持続可能な電池を開発

再生可能エネルギーが鍵

石炭を動力源とする蒸気機関の発明によって起こった産業革命は、急速に近代化を進める土台となりました。次の段階では、エネルギーや化学製品に石油を利用することで、先進国はさらなる発展を遂げました。しかし、私たちは、地球温暖化や環境汚染、化石資源の枯渇化など、様々な地球規模の問題を置き去りにしてきています。

 

私は、これからの化学者が果たすべき重要な役割の一つは、「再生可能エネルギーに基づく持続可能社会の実装」を実行することだと思っています。再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱・中小水力や、生物に由来するバイオマスなど、自然のしくみの中で循環できるため消費しても枯渇しない、持続可能なエネルギーのことです。

 

最近アメリカで起こったシェールガス革命では、低コストでメタンガスが採掘されるようになり、注目を集めています。このメタンガスも、バイオマスから作ることができます。

 

太陽光とメタンで電気を発生させる

 

私は、再生可能エネルギーである太陽光とバイオガス由来のメタンから電気を発生させ、さらに、メタンを様々な用途のあるメタノールに変換する持続可能なシステムの開発を目指し、「光で駆動するメタン酸化電池の開発」の研究をスタートしました。

 

技術革新を伴うこの電池の開発は、ニーズ(社会的要請)とシーズ(学理追究型基礎研究)が強く結びついた研究テーマです。これからの科学技術開発は、ニーズとシーズのどちらかが欠けても発展していかないと考えています。

 

実験の様子

 

 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

SDGsの目標の中で、化学者は「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」と「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の課題に取り組む義務があると考えます。

 

その一例として、日本で地産地消可能なエネルギー・資源の循環システムを確立することが必要です。

 

私はバイオマスに注目しています。すでにバイオガスであるメタンを使った地産地消のエネルギー循環システムが確立している地域もあることから、地域の特色に応じた循環システムを構築することが重要だと考えています。

 


◆先生が心がけていることは?

 

エコバッグを使用する。食品ロスを生まないように生活する。

 

 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

私はもともと学理を追究していく研究が好きで、理学部化学科で博士号を取りました。その後、博士研究員として工学部応用化学に移り、同学部で助教、准教授になっていく中で、応用研究がどれだけ重要か気づかされました。理学部から工学部に移ったことにより、シーズとニーズ両方が大切だということに気づくことができたのです。

 

特に日本では、諸外国に比べて基礎研究が応用研究に展開されていないことを知り、さらにその思いは強くなり、学理追究によるシーズの発見と、人類の利益となりうるニーズを強烈に結びつける研究が必要だと強く感じました。その結果、「再生可能エネルギーに基づく持続可能社会の実装」を目指して「光で駆動するメタン酸化電池を開発する」というテーマにたどり着きました。

 

◆学生時代

 

映画をたくさん観て、本をたくさん読んできました。人間は文化的な生活を切り離してはいけません。科学者は科学だけに没頭していればいいのではなく、多角的に物事を眺めるためには、視野を広げておくことがとても重要なのです。研究では、実験だけでなく、プレゼン能力やコミュニケーション能力、論文を書くための文才、論理的に考える力など、多岐に渡る能力が必要であり、それらすべてをひっくるめた人間力が重要になります。

 

◆出身高校は

 

石川県立小松高校

 

 先生の分野を学ぶには

「無機化学」学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)

 「17.化学・化学工学」の「69.無機化学(錯体等)」

 


 注目の研究室や研究の大学へ行こう!

山中伸弥

京都大学 iPS細胞研究所

【iPS細胞の開発】ニーズとシーズが強烈に一致した研究を行った。極めて独創的な基礎研究によってノーベル賞級のシーズを見出し、しっかりと応用研究に展開している。また自身の研究を信じきる強いマインド・信念・情熱も素晴らしい。

iPS細胞研究所HP


落合陽一

筑波大学 情報学群 情報メディア創成学類

【超AI基盤に基づく空間視聴触覚技術の社会実装】大学という枠に捉われない研究スタイルは、現在必要とされる大学改革にとって、1つのロールモデルとなりうる。それだけでなく、AIをしっかりと社会実装に結びつけられる研究能力の高さにも注目。

デジタルネイチャー研究室HP

 


 松本先生の研究・研究室を見てみよう

ゼミ生たちの打ち合わせの様子

 

 先生の学部・学科で学ぼう

私が所属している学部の強みは、工学部でありながら、基礎研究にも力を注いでいる点です。さらに、幅広い分野の研究者が揃っており、各分野の最新の状況や問題点に触れることができる点も強みと言えます。今後は、今まで以上に、学際的な研究が必要になってくるでしょう。それに対応できる、幅広い知識を得るには有利な学科であると思います。

 

 中高生におススメ

教祖誕生

北野武(新潮文庫)

高校時代に読んで感銘を受けた本。人は何を信じて、どのように生きるのか、画一的な正解や正義は意味を持たず、多角的に物事を考えることが大切だということがわかる。

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いまを生きる

ピーター・ウィアー監督

詩の素晴らしさを伝える英語教師と生徒の物語。ものごとは捉え方によって見え方が変わることを生徒に伝えていく過程が描かれる。タイトルの通り、今を精一杯生きることの大切さを感じられる映画。

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2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望

落合陽一(SBクリエイティブ)

高校生には読みやすい本だと思う。落合陽一先生は、これからの科学者のロールモデルとなりうる人物で、科学者であっても、社会経済などの知識も必要とする新しい研究者像である。その落合先生による今後の社会の展望を示した著書。

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 先生へ一問一答!

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

フランス:行ってみた海外の国の中で、一番日本の感覚に近かったから。

 


Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

ザ・ハイロウズ。特に『千年メダル』

 


Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

感動した映画は、『HANA-BI』(北野武監督)、『たそがれ清兵衛』(山田洋次監督)。印象に残っている映画は、『ひまわり』(行定勲監督)、『海を飛ぶ夢』(アレハンドロ・アメナーバル監督)。

 


Q4.大学時代の部活・サークルは?

野球、将棋

 


Q5.会ってみたい有名人は?

北野武、甲本ヒロト