若手研究が世界を変える!

【環境動態解析】

エアロゾル

気候変動の原因、大気中の微粒子の分析モデルは、国連にも採用

竹村俊彦先生

 

九州大学

総合理工学府/応用力学研究所 大気海洋環境研究センター

 

 先生のフィールドはこの本から

異常気象と気候変動についてわかっていることいないこと

筆保弘徳、川瀬宏明、梶川義幸、高谷康太郎、堀正岳、竹村俊彦、竹下秀(ベレ出版)

気候変動に伴って現在増加しつつある災害・損害をもたらす異常気象について、そのしくみを一般向けに解説しています。充実したコラム欄では研究者の経験などが語られており、高校生の進路選択のヒントになりそうな内容もあります。

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 世界を変える研究はこれ!

気候変動の原因、大気中の微粒子の分析モデルは、国連にも採用

国際的な環境問題、気候変動と大気汚染

現在、国際的に代表される環境問題が「気候変動」と「大気汚染」です。両者とも人類の活動によって引き起こされているため、人類自らがその原因を削減していかなければなりません。具体的な削減方法を決めていくためには、科学的な情報に基づく必要があります。

 

数値モデル開発は修士課程時代から

 

そのために、私は、気候変動も大気汚染も引き起こす大気中の微粒子「エアロゾル」に注目し、その地球規模での状況を解明するために、大学院修士課程1年生のときから独自の数値モデル(ソフトウェア)SPRINTARSを開発してきました。

 

現在では、精度の高い数値モデルであると国際的に認識され、国連の気候変動に関する報告書など多方面で利用されています。

 

PM2.5の濃度予測をボランティアで毎日提供

 

また、よく知られているPM2.5や黄砂は、エアロゾルの一部です。そこで、独自開発したSPRINTARSを使ってPM2.5や黄砂の濃度を予測し、その情報を広く一般向けに提供する活動をボランティアで毎日続けています。

 

科学的な探求がもっと求められる環境研究

 

基本的に物理や化学の法則に従って数値モデルを構築しますが、科学的理解が進んでいない過程を組み込まざるを得ない場合もあります。例えば、エアロゾルは雲が生成する時に核の役割を果たしますが、みんながいつも目にする雲でありながら、その過程は、特に氷の雲の場合はほとんど法則化されていません。

 

環境分野は、身近な科学なので社会的接点が多いという特徴がある一方で、科学的に理解できていないので、探求の必要があることも非常に多い分野です。

 

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書の執筆会議にて(最前列左で座っているのが竹村先生)。

研究成果を国際的な問題の解決へ向けて還元できることが研究の1つの魅力です。

 

 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

SDGsそのもののための研究をしています。気候変動とその影響を軽減するための対策の基盤となる最新の科学的知見を示すことを常に意識しています。また、気候変動によって貧困・飢餓・健康・水・陸域生態系の問題などが起こり、さらに、気候変動問題を解決するためには質の高い教育・クリーンエネルギー・技術革新・適切なまちづくり・海洋資源保全が必要であり、他のSDGsとも密接に関わります。

 


 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

小学生の時に星空に興味を持ち、お小遣いやお年玉を貯めて買った天体望遠鏡や、親に借りた一眼レフフィルムカメラを使って、よく観察していました。天文学を志して大学・学科を選んで入学しましたが、それまでに学んできた基礎物理を活かせて直接的な社会貢献ができそうな同じ学科にあった気象学に魅力を感じるようになりました。

 

当時、気候変動問題が社会的に広く認知され始めたこともきっかけではありました。その後、数値シミュレーションによる研究手法に興味を持ち、国際的に活躍する大学院時代の指導教員のアドバイスにより、エアロゾルを研究対象とすることになりました。

 

◆学生時代

 

陸上部で短距離を専門としていました。その後は時々ジョギングをするようになり、フルマラソンも4回経験しました。ジョギング中に、自ら開発した数値モデルの名称であるSPRINTARSを思いつきました。短距離走者を意味するsprinterの複数形とは1文字違いです。

 

◆出身高校は?

 

私立東海高校

 

 先生の分野を学ぶには

「環境動態解析」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

1.環境・防災」の「2.地球温暖化、環境化学・モニタリング」

 


 竹村先生の研究・研究室を見てみよう

日本学士院学術奨励賞を受賞した際の盾と共に。学術賞の受賞は研究を継続していくための励みになります。

 

 気候変動の数値モデル開発研究ができる大学は

気象や気候変動を扱う研究室は全国に数多くありますが、データ解析や観測を主な手法としている研究室の比率が高いです。数値モデル開発を主な手法としている研究室は少なく、私を含めて、約30年前に設立された東京大学気候システム研究センター(現在は大気海洋研究所気候システム研究系になり、学生所属は理学系研究科地球惑星科学専攻)の修了者が主宰している研究室などに限られます。九州大学総合理工学府、名古屋大学環境学研究科、北海道大学理学研究院・環境科学院などが該当します。

 

 中高生におススメ

グスコーブドリの伝記

宮沢賢治(ちくま文庫 宮沢賢治全集8)

農業の専門家であった宮沢賢治が、今から100年近く前であるにもかかわらず、気候変動に関する科学的知見に基づいて構成した物語です。現在掲げられているSDGsに関する活動に通じる精神が読み取れます。

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不都合な真実2 放置された地球(映画)

ボニー・コーエン(監督)

気候変動や大気汚染は科学的知見を土台とした対策しか選択肢はなく、政治的主観が左右することはあり得ないことを再認識できる映画です

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 先生へ一問一答!

Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

布袋寅泰

 


Q2.大学時代の部活・サークルは?

陸上部

 


Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

テレビ・ラジオでアナウンサーが読む天気予報原稿の作成(大学生の時に気象予報士の資格を取得しました)。