若手研究が世界を変える!

【ナノ構造物理】

宇宙ダスト

ナノ粒子研究と宇宙分野の融合

NASAとも共同研究、宇宙ダストの謎を解き明かす

木村勇気先生

 

北海道大学

理学研究院 宇宙理学専攻(低温科学研究所)

 

 先生のフィールドはこの本から

量子力学で生命の謎を解く

ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン、訳:水谷 淳(SBクリエイティブ)

全く関係ないと思われる量子の世界の現象を元にして生命活動を理解する試みは、新しい世界が広がる楽しさを教えてくれます。私もナノ粒子と結晶成長や、ナノ粒子と天文学を結び付けて研究しています。異なる分野の融合が新しい世界を切り開くことを改めて認識させてくれます。

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 世界を変える研究はこれ!

NASAとも共同研究、宇宙ダストの謎を解き明かす

ナノ研究者、宇宙ダストに出会う

私は学生時代、ナノ粒子の研究をしていました。ナノ粒子は、0.1マイクロメートルよりも小さな粒子です。ある時、星の欠片(宇宙ダスト)の研究をしている先生と出会い、その大きさがナノ粒子と同じ程度だと知りました。

 

さらに、宇宙にはナノ粒子が大量に存在していることや、隕石中に沢山含まれていること、さらには、その生成過程はほとんどわかっていないことを知りました。

 

その時、ナノ粒子の不思議な性質を考慮すれば、宇宙ダストの生成過程を解明できるだろうと考えました。それから約20年、ナノ粒子と宇宙ダストを融合した研究に取り組んできました。

 

地上実験から宇宙の条件下での実験へ

 

宇宙ダストの研究を始めて10年ほど経ったころ、微小重力実験を行っている先生と出会う機会がありました。地上と宇宙で結晶のでき方が違うというのです。

 

これまでの宇宙ダストの研究は、地上実験を元に得られた知識の上に成り立っていました。ですが、宇宙ダストは宇宙で作られるので、宇宙実験を元にした知識を使って考える必要があると気がつきました。

 

それ以来、航空機やロケットを使って宇宙ダストの再現実験を行っています。特にロケットを使うと、星からの放出ガスの中で作られる宇宙ダストを見事に再現することができます。

 

この宇宙ダストは、地球のような天体やその上で生活する生命の始まりです。今では、ヨーロッパの宇宙機関やNASAとの共同研究で、宇宙ダストの謎を次々と解き明かしています。

 

打ち上げ直前のNASAの観測ロケット。研究代表者の木村准教授(左)とアメリカ側代表のNuth博士(NASA)。NASAとの共同研究で、私が作った実験装置をNASAのロケットでホワイトサンズミサイル実験場から宇宙空間に飛ばして無重力実験を2019年10月に行いました。宇宙ダストを人工的に再現合成する実験です。Nuth博士は2004-2006年に私がNASAで働いていた時にお世話になった先生です。

 

 プレイバック学生時代

◆中学時代は

 

マラドーナ(今の時代でいうならメッシのようなサッカー選手)とアインシュタインに憧れていましたので、ワールドカップに出て優勝し、ノーベル賞を取りたいと思っていました。けがをしてプロサッカー選手への道は早々に絶たれたので、それ以来、もう一つの夢に向かっています。 

 

 先生の分野を学ぶには

「ナノ構造物理」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

15.エレクトロニクス・ナノ」の「61.ナノテクノロジー」

 


 注目の研究室や研究の大学へ行こう!

渡部直樹

北海道大学 理学研究院 宇宙理学専攻/低温科学研究所

【宇宙分子進化の研究】宇宙で分子が作られる過程を明らかにしています。実験技術の高さに影響を受けました。

渡部先生プロフィール(北海道大学HP)


三浦均

名古屋市立大学 総合生命理学部 総合生命理学科/理学研究科 理学情報専攻

惑星科学、天文学と結晶成長を股にかけた理論的研究をしています。物理的な物の見方に注目しています。

三浦研究室HP


羽馬哲也

東京大学 総合文化研究科 広域科学専攻/先進科学研究機構

表面反応に関する研究を宇宙から動物、植物まで幅広く行っています。確固た

る知識の蓄積とその深さに影響を受けました。

羽馬研究室HP

 


 木村先生の研究・研究室を見てみよう

透過型電子顕微鏡でナノ粒子を観察する木村准教授。実験室やロケットで作った人工宇宙ダストや隕石から取り出した実際の宇宙ダストをはじめ、たんぱく質ナノ粒子や光触媒粒子、セメント粒子などを、原子が並んでいる所まで拡大して観察できる顕微鏡で分析しています。

打ち上げを待つ観測ロケットMASER 14。研究代表者の木村准教授(前列右から 2人目) とスウェーデン宇宙公社のスタッフ達 。ドイツ航空宇宙センターとの共同研究で、私が作った実験装置をスウェーデン、キルナにあるエスレンジからスウェーデン宇宙公社のロケットで宇宙空間に飛ばして無重力実験を2019年6月に行いました。宇宙ダストを人工的に再現合成する実験です。

 

 中高生におススメ

中谷宇吉郎(岩波文庫)

大きな研究テーマも、身近な対象に真摯に向き合うことから始まることを教えてくれます。大きなことを成し遂げたいけれど、何から手を付けていいかわからないという人にお勧めです。

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隕石 迷信と驚嘆から宇宙化学へ

マテュー・グネル、訳:米田成一、 斎藤かぐみ(文庫クセジュ)

数学や理科といった自然科学の分野も、過去の歴史の上に成り立っていることが再認識できます。歴史と科学の両方に興味を持っている人にお勧めです。

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 先生へ一問一答!

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

物理学

 


Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

国際宇宙ステーション。アメリカに住んだ時に日本を再発見できたように、地球外に住めば、地球を再発見できると思うから。

 


Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

子供の弾くバイオリン。『ユーモレスク』が好きです。

 


Q4.感動した映画は?印象に残っている映画は?

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

 


Q5.熱中したゲームは?

小中学生の頃は、『ドラゴンクエスト』

 


Q6.研究以外で楽しいことは?

子供と遊ぶこと