若手研究が世界を変える!

【構造生物化学】

ゲノム編集

革新的なゲノム編集ツール開発に成功

西増弘志先生

 

東京大学

先端科学技術研究センター 構造生命科学分野

(理学系研究科 生物科学専攻 兼任)

 

 

 先生のフィールドはこの作品から

CRISPR (クリスパー)  究極の遺伝子編集技術の発見

ジェニファー・ダウドナ、サミュエル・スターンバーグ、訳:櫻井祐子(文藝春秋)

現在注目を浴びているゲノム編集技術に関して、基礎研究から技術開発に至るまでの舞台裏が、第一線の研究者によって臨場感豊かに書かれている。ただ、ゲノム編集技術の開発には多くの研究者が関与しており、著者が「ゲノム編集技術を開発した」というのは少々言い過ぎかもしれない。

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 世界を変える研究はこれ!

革新的なゲノム編集ツール開発に成功

DNAを狙った位置で切断するタンパク質Cas9

新型コロナウイルスが人間社会に未曽有の影響を与えていますが、細菌もウイルスからの脅威にさらされており、独自の免疫系を持っています。

 

そのひとつであるCRISPR-Cas(クリスパー・キャス)獲得免疫系では、Cas9と呼ばれるタンパク質がガイドRNAと複合体を形成し、ガイドRNAと相補的な2本鎖DNAを選択的に認識・切断します。

 

このようなCas9のはたらきは2012年に明らかにされました。ガイドとなる塩基配列は自由に変えることができるので、異なるガイドRNAを用いると、ゲノムDNA(生命の設計図)を狙った位置で切断することができます。

 

また、別の研究から、ゲノムDNAが切断されると、それをきっかけに周辺の塩基配列がまれに変化することがわかっていました。

 

標的DNAが切断されるメカニズムを解明

 

2013年、Cas9を用いたゲノム編集技術が報告され、現在では基礎研究から遺伝子治療に至る様々な分野において広く利用されています。しかし、Cas9とガイドRNAが協働して標的DNAを切断するメカニズムは謎に包まれていました。

 

2014年、私たちはCas9、ガイドRNA、標的DNAからなる複合体の分子構造を世界にさきがけて決定し、そのメカニズムを解明しました。

 

さらに、明らかになった分子構造を基に、Cas9やガイドRNAを改造し(タンパク質や核酸も自在に改造することができます!)、新しいゲノム編集ツールの開発にも成功しました。

 

西増先生たちが世界で初めて明らかにしたタンパク質(ゲノム編集に利用されているCas9)の立体構造のCG図

 

 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

もともとタンパク質とRNAが協働してはたらくメカニズムに興味があり、研究を行っていました。2013年、ゲノム編集技術の第一人者であるマサチューセッツ工科大学のFeng Zhang博士から、「Cas9の構造解析を一緒にやらないか」という一通のメールが、教授のもとに届きました。Feng Zhang博士とは以前に別の研究テーマに関して共同研究を行ったことがあり、そのような経緯でCas9の共同研究の打診があったのです。

 

ちょうどその時、挑戦的な研究テーマを模索していたところだったので、熾烈な競争があるのはわかっていましたが、Cas9の構造解析に取り組むことにしました。この決断が人生を大きく変えることになりました。

 

◆大学時代

 

もともと格闘技が好きで、大学で少林寺拳法部に入部しました。拳法部では、その時しかできないような色々な経験を通じて、肉体的にも精神的にも大きく成長することができ、生涯の友人もできました。学生時代にはキックボクシングも始め、沖縄で試合をする機会も得ました。また、教員になってからはボクシングを始め、ライセンスを取得しました。これらの経験は研究にも役に立っていますし、初対面の研究者との話のきっかけにもなるので、良かったと感じています。

 

◆出身高校は?

 

北海道北見北斗高校

 

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7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」

 


 注目の研究室や研究の大学へ行こう!

Feng Zhang

Massachusetts Institute of Technology School of Engineering Department of Biological Engineering

【CRISPR-Casの基礎研究および応用研究】まだ38歳と若いですが、2013年にCRISPR-Cas9を利用したゲノム編集技術を世界にさきがけて報告し、その後も新規CRISPR-Cas酵素の発見といった基礎研究、および、ゲノム編集・核酸検出技術の開発といった応用研究の両面で世界をリードしています。7年間共同研究を続けていますが、Fengと一緒に研究できたのは幸運でした。

Zhang研究室HP

 


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生物化学科では、様々な生命現象を分子・遺伝子のレベルで解明・理解することを目指して研究しています。具体的には、タンパク質、核酸、糖、脂質などの生体高分子の構造機能解析から、培養細胞やモデル動物を用いた機能解析を行い、物理・化学の視点で生命現象を根底から理解します。学生は、物理、化学、生物学から情報科学に至る広い分野の知識を得ることができます。

 

 中高生におススメ

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最近読んで非常に感銘を受けた。これからの時代、広い視野をもって新しいことに挑戦することが重要になってきているので、ぜひ高校時代に読んでほしい。

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 先生へ一問一答!

Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

B’z

 


Q2.熱中したゲームは?

『ストリートファイターII』、『実況パワフルプロ野球』(学生時代)

 


Q3.大学時代の部活・サークルは?

少林寺拳法部

 


Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

沖縄米軍基地でのキックボクシングの試合(メインイベント)

 


Q5.研究以外で楽しいことは?

ボクシング、食べ歩き