【中国哲学・印度哲学・仏教学】

インド仏教

インド仏教の衰退をめぐる実態を明らかに

久間泰賢先生

 

三重大学

人文学部 文化学科(人文社会科学研究科 地域文化論専攻)

 

 出会いの一冊

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高校で学ぶ倫理を土台に、防災・減災教育や災害時の心のケア、科学技術論などについて論じています。私自身も、コラム「インド思想における筏と洪水伝説」を執筆しています。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

インド仏教の衰退をめぐる実態を明らかに

密教思想の台頭とイスラーム勢力により衰退したのか

私は現在、国内外の多くの研究者とともに研究プロジェクト(通称Vihāra Project、vihāraはサンスクリット語で「僧院」の意)を推進しています。その目的は、インド仏教の僧院の機能に着目して、グプタ朝以降、衰退に向かったとされるインド仏教の実態を明らかにすることです。

 

従来のインド仏教史では、「グプタ朝以降の密教思想の台頭とともにインド仏教は衰退に向かい、最終的には13世紀初頭にイスラーム勢力による僧院破壊が行われたことで滅亡に至った」という理解が多くなされてきました。

 

その理由としては、密教思想の台頭に伴う仏教のヒンドゥー教化・モラルの退廃、カースト制度を基盤とするヒンドゥー教に比べて、一般社会との結びつきが弱かったことなどが挙げられています。

 

グプタ朝以降も僧院は活発に機能していたのではないか

 

しかし教理の面では、12世紀頃のインド仏教は僧院を拠点として高度な発達を示しています。また、グプタ朝やパーラ朝のような有力な王朝は、複数の大僧院を建立して仏教を庇護しました。グプタ朝以降のインド仏教は、僧院を中心として活発に機能していたという言い方もできるのです。

 

さらに、イスラームによる攻撃に関しては、13世紀頃まで複数の宗教勢力(仏教、ヒンドゥー教、イスラームなど)の間に政治性を伴う緊張関係があったとする議論も近年出ています。インド仏教の衰退をめぐっては、我々が想像する以上に複雑で多面的な状況があったはずです。そのような状況を読み解いていくために、2018年度から国際的・学際的性格を持つ研究会やワークショップを開催し、議論を重ねています。

 

「デーヴァナーガリー文字」の積み木
「デーヴァナーガリー文字」の積み木
 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「グプタ朝以降のインド仏教の僧院に関する総合的研究」

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回すと功徳があるとされる「マニ車」
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 先生の学部・学科は?

三重大学人文学部文化学科は、地域研究の観点から「日本研究」、「アジア・オセアニア研究」、「ヨーロッパ・地中海研究」、「アメリカ研究」の4つの教育カリキュラム単位に分かれています。それぞれのカリキュラム単位には、様々な学問分野の先生方が所属して、専門的かつ学際的な視点から授業を実施しています。卒業論文についても、学生さんのユニークな問題意識をできる限り尊重した上で、執筆指導を行っています。

三重大学人文学部のページ 

 

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 先生に一問一答

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

チェスケー・ブジェヨヴィツェに移住して、美味しいビールを飲んで一日を終える老後を過ごしたいという夢を持っています。

 

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

特定のアーティストというわけではないのですが、クラシックのオルガン曲に惹かれて、大学時代に様々なアーティストのCDを数多く集めました。それを今でも時折取り出しては聴いています。とりわけ、バッハやデュリュフレのオルガン曲全般が好きです。

 

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

大学時代に、友人と銀座の映画館で『ニュー・シネマ・パラダイス』を観て、時間の感覚と言葉を失うほどに感動した記憶があります。

 

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

当時はバブル期だったので、地鎮祭の会場設営(神棚やパイプ椅子などの設置が中心です)のバイトを頻繁にしていました。