【認知科学】

脳内イメージ

物の形をイメージする時、人間は脳の中で手を動かしている!?

笹岡貴史先生

 

広島大学 

脳・こころ・感性科学研究センター

 

 出会いの一冊

脳のなかの幽霊

V・S・ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー、訳:山下篤子(角川文庫)

私たちが当たり前に経験している世界が、脳によって作り上げられた世界であることを、わかりやすく、かつインパクトのある事例をもとに知ることができる良著だと思います、脳科学や心理学に興味のある学生さんには、是非読んでいただきたい本です。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

物の形をイメージする時、人間は脳の中で手を動かしている!?

心の中でリンゴを違う方向からイメージできるのは

 

赤いりんごを思い浮かべてみて下さい。皆さんは心の中でりんごの「イメージ」を作れたと思います。また、りんごを違う方向から見たイメージも作れると思います。では、どのようにして私たちの脳はイメージを作り、操作しているのでしょうか。

 

最近、イメージとは脳の中にある自分の身体モデルを使って次に起こることをシミュレーションした結果であるという仮説が提案されています。そう考えると、物を別の方向から見た様子をイメージする時、脳内で「手を使って」物を回すシミュレーションをしているのかもしれませんね。

 

手の回しやすさが物を回転させるイメージに影響

 

これを確かめるため、物を右手で回して見え方の変化を観察した後で、物を別の方向から見た様子をイメージする実験をしました。その結果、右手を回しやすい方向(右ネジの方向)に回転したイメージは、反対方向の回転より容易であることがわかりました。

 

つまり、手の回しやすさが物を回転させるイメージに影響することから、脳内で「手を使って」いることが推測されます。一方、イメージを回転している時の脳活動を調べると、空間処理に関わる頭頂葉と、運動に関わる運動野が働くことがわかっていて、この結果とよく一致します。

 

さらに、今行っている研究では、イメージのしやすさの個人差がどのような脳のメカニズムに基づいているのかを調べています。これがわかれば、イメージの苦手な人がイメージを作ることができるようになるための方法がわかるかもしれません。

 

研究拠点にて、MRI実験を行っている様子
研究拠点にて、MRI実験を行っている様子
 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「イメージ生成能力の個人差が心的イメージ変換に及ぼす影響およびその神経基盤の解明」

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参画している研究プロジェクトの研究会での一コマ
参画している研究プロジェクトの研究会での一コマ
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広島大学脳・こころ・感性科学研究センターは2018年にできた新しい研究組織です、センターにはMRI装置、脳波計、生理計測装置などがあり、ヒトのこころ、感性を脳科学的・心理学的に研究するための設備が整っています。また、大学・企業研究者が一つ屋根の下で共創することで、基礎研究を社会実装につなげ、ものづくりにイノベーションを起こす、他に類を見ない産学連携の取り組みも進められています。