【考古学】

青銅器

小さな青銅の刃物に注目!いきいきとした弥生時代に迫る

吉田広先生 

 

愛媛大学

法文学部 人文社会学科(愛媛大学ミュージアム)

 

 出会いの一冊

ブラタモリ

番組では地形を主たる素材としていますが、日常的な普段の生活の風景の中に、地形の成り立ちや歴史の痕跡を見いだすことができることを、実体験にもとづきながら楽しく伝えています。同時に、地形や歴史だけでなく、学びのきっかけは、ネットを通さずとも、いくらでも生身の自分の周りに存在することに気づかせてくれます。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

小さな青銅の刃物に注目!いきいきとした弥生時代に迫る

弥生時代の青銅器、刃物としても使っていた

暗記物と思っている歴史の勉強では、「縄文土器は黒く派手な装飾、弥生土器は赤くシンプルな形」といったように、単純な比較で覚えこんでいないでしょうか。私が研究している弥生時代の青銅器も、実用の道具としての鉄器に対し、祭りの道具として使われていたと一般には語られます。一抱えもある大きさの絵画が描かれた銅鐸や、実用に振り回すことのできないほど大きな銅剣や銅矛だからです。

 

しかし、実際に深く学んでみると、そう単純に割り切れるものではありません。青銅器は日本列島に住んだ人が初めて手にした金属で、その貴重で切れ味鋭い金属を、実用の道具に使う場面も少なくありませんでした。大きな青銅器の陰に隠れつつ、小さな青銅の刃物が確実に存在しています。時には、銅剣などの大きな青銅器の破片を再加工して刃を研ぎ出したものも見られます。

 

主流ではない歴史を捉えて、全体を考える

 

初めて手にした材料あるいは道具をどのように使うか、その試行錯誤の積み重ねが歴史総体とも言えるでしょう。「真実は細部に宿る」と、主流とならなかった小さな青銅の刃物を追いかけ、歴史の主流にいたる源流、あるいは主流の下に潜った伏流を捉えて全体を考えることで、もっといきいきとした歴史の実像に迫ることができるはずです。そして、これからの新たな時代を生きていくヒントにもなり得るはずです。

 

銅剣の詳細を図面に起こす作業中。銅剣との語らいの至福の時。ただ最近は目がついていかず、ヘッドスコープをかけての奮闘です。
銅剣の詳細を図面に起こす作業中。銅剣との語らいの至福の時。ただ最近は目がついていかず、ヘッドスコープをかけての奮闘です。
 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

歴史の中の人々が、新しい素材や道具をどう使ったのか。現代的な利益や便利さの追求だけでない、多様な対応の存在に気づかされます。もはや、ずっと右肩上がりに発展していくとばかりは考えられない社会の中で、そもそも「実用的」・「効率的」といった考え方は普遍的な価値なのでしょうか。

 


 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「日本列島における刃物としての青銅器の再検証」

詳しくはこちら

 

 注目の研究者や研究の大学へ行こう!

寺前直人

駒澤大学 文学部 歴史学科/人文科学研究科 歴史学専攻

弥生時代の武器のあり方を詳細に検討し、さらにそこから新たな弥生時代像を描き出そうとしています。

寺前先生のページ

 


 どこで学べる?

「考古学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

20.文化・文学・歴史・哲学」の「83.史学、考古学」

 


 先生の研究室では

考古学は、書かれた文字でなく、土器や石器といった「モノ」から過去の人間の行動、歴史を考える学問です。そのため、まずは物事をしっかり観察するよう話します。ドラマで見る物的証拠を集める鑑識の仕事こそ、考古学に他なりません。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
高知県の高岡神社の祭礼では、弥生時代の銅矛が祭礼に用いられています。考古資料である一方で、江戸時代に発見されて以来、地域の中で意味を与えられてきた姿がここにはあり、現代社会の中で文化財そして考古学の役割を考えさせられます。
高知県の高岡神社の祭礼では、弥生時代の銅矛が祭礼に用いられています。考古資料である一方で、江戸時代に発見されて以来、地域の中で意味を与えられてきた姿がここにはあり、現代社会の中で文化財そして考古学の役割を考えさせられます。
 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

 

(1) 官庁、自治体、公的法人等の企画・調査、コンサルタント

(2) 学術系研究所等の企画・調査、コンサルタント

(3) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関の教員・研究者

 

◆学んだことはどう生きる?

 

地方自治体の教育委員会や埋蔵文化財センターなどの発掘調査組織で、発掘調査からその成果を報告にまとめ、そして展示や研究を通して、地域の歴史研究の進展だけでなく、地域社会そのものの維持・活性化に、大いに貢献しています。

 

「実用的」と言われる学問分野ではないがゆえに、ただ一つの解に向かわず、多様な価値観で物事を捉えていく視点こそ重要とする考え方を持てることが、私の学問分野の強みだと思います。

 

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

新井紀子(東洋経済新報社)

やや大人向けですが、これからAIが一層多くの仕事をしていく社会に出て行く若い世代が何を求められているのか、AIに代替される危機感を抱いてもらえればと思います。

 


 先生に一問一答

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

考古学

 

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

玉置浩二

 

Q3.大学時代の部活・サークルは?

考古学研究会

 

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

映画エキストラ