【政治学】
ウクライナ地域研究
ロシアによるクリミア併合後の、ウクライナの政治体制を解明
大串敦先生
慶應義塾大学
法学部 政治学科(法学研究科 政治学専攻)
オリバー・ストーン オン プーチン
オリバー・ストーン、訳:土方奈美(文藝春秋)
映画監督のオリバー・ストーンが、ロシアのプーチン大統領に密着取材した記録。書籍版の他に、DVD版があります。何かと悪役にされがちなロシアという国ですが、ここでは、ともあれロシア側の理屈を理解できます。
その理屈に同意するにせよ、しないにせよ、外国を研究する上で、相手の理屈を理解することは、極めて重要なことです(繰り返しますが、同意までする必要はありません)。それは多分外国を研究する時だけでなく、普通に社会で生きる時にも重要なことだと思います。
ロシアによるクリミア併合後の、ウクライナの政治体制を解明
「2014年クリミア危機」の衝撃
2014年に、ウクライナのキエフで政変が起き、ロシアによるウクライナのクリミア併合、その後ドンバス地域での戦争と続きました。この事態の展開も衝撃的でしたが、他方ウクライナを舞台にロシアと欧米が代理戦争を行っていて、ウクライナは東西に分裂している、といった見解がマスメディアで広められたことも、私には衝撃的でした。
ウクライナは東西にのみ分裂しているのではなく、ずっと多くの構成部分からなっているにもかかわらず、それぞれは分離主義的ではなく求心的に競争している体制――「求心的多頭競合体制」と呼んでおきます――と私は考えていたからです。
ウクライナで現地取材
私の研究プロジェクトでは、この体制が2014年の政変後どのように変化しつつあるのか、特にウクライナ東部を考察することで検討しようと考えました。首都以外の都市に足を運び、現地の政治家、ジャーナリストや研究者にインタビューを試み、中央政治と地方政治の関係性の変化を分析しています。
大統領選で予想外の結果
この研究課題を遂行している最中に、ウクライナでは大統領選挙があり、当時政治家としては無名だったゼレンシキーが当選する、という予想外の事態が生じました。
当初の想定とは異なる事態に直面して、考えを修正するプロセスも現状分析の醍醐味の一つだと思います。現在、新型コロナウィルスの影響で現地調査が困難になったことは研究の進捗に大きな問題となっています。世界的にもこの混乱が早く収束してほしいものだと思います。
カラマーゾフの兄弟
ドストエフスキー、訳:原卓也(新潮文庫)
とにかく、頭の中でこれまで使ったことのなかった部分をぐちゃぐちゃといじられた気分になったことを、よく覚えています。カラマーゾフに限らず、ドストエフスキーにはそういうところがあるように思います。