【心理学】【社会心理学】

描画分析

社会調査・心理検査・心理療法に用いる描画を画像解析、心理理解を深める

竹村和久先生

 

早稲田大学

文学部 文学科(文学研究科 人文科学専攻)

 

 出会いの一冊

選択の科学

シーナ・アイエンガー、訳:櫻井祐子(文藝春秋)

選択の現象について、文化の問題を交えながら興味深く論述しています。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

社会調査・心理検査・心理療法に用いる描画を画像解析、心理理解を深める

描画には人となりが投影される

描画はひとりひとり描き方が異なるため、その人らしさが表れやすく、また投映法の中でも実施が比較的容易で、短時間に多くの情報を得ることができます。

 

心理検査の投影法としての描画には、樹木画テストをはじめとして、人物画テスト、風景構成法、動的家族画など様々な方法があります。これらの描画法から、人格、知的水準、精神状態、自己像、対人知覚、家族の問題などを捉えることができます。

 

医学的診断や心理学的評価に多用される樹木画テスト

 

一方、こういった描画は心理検査として用いるだけでなく、心理療法の一部として実施されることもあります。描画は、言語では表出されない、あるいは表出しにくい側面を表現することが可能であり、治療的価値として、絵画表現は言語表現と同等のものと捉えられています。

 

コッホ(Koch)によって体系的に開発された投映法の樹木画テストは、医学的診断の補助や臨床心理学的評価のために用いられることが多く、その使用頻度も高いものです。

 

信頼性を高めるため、他分野の画像解析の手法を導入

 

樹木画研究においては、方法論的な問題を指摘することもありますが、これまでにもこれらの問題点を補うべく、描画特徴を質的に検討するだけでなく、量的にも検討した研究が認められています。

 

特に、特定の病理群や臨床群の樹木画特徴に対する研究が進んでいます。私たちの研究グループは、樹木画の評定の信頼性を更に高めるため、工業製品に関する物体認識や、映像の計算論的認識や脳機能画像解析で用いられている画像解析の方法を、樹木画の形式的分析に援用できるのではないかと考えました。

 

新しい手法で進む樹木画の画像分析

 

樹木画の画像分析は2004年に最初に提案し、その後も新しい手法を取り入れて、近年では臨床的応用の検討を中心にしています。これらの描画の画像分析は、(1)描画の計算機への画像取り込み:スキャナーを用いて計算機の画像に描画を取り込む、(2)描画像の分割:描画の画像を必要に応じて、いくつかに分割します。

 

樹木画テストの場合は、用紙の画像を縦横にそれぞれ2等分し、4つの領域に分けるなどする、(3)描画の画像分析:濃度ヒストグラムによる分析、空間濃度レベル依存法による分析、濃度レベル差分法による分析、フーリエ解析、特異値分解、ウェーブレット解析などの手法を用いた画像分析を行う、(4)分析結果からの描画の解釈:画像分析による描画の定量的特徴から描画の解釈を行い、あわせて臨床的観点、あるいは問題解決的観点からの全体的評価と照合して総合評価を行う、という手続きで行っています。

 

現在は統合失調症患者などの描画の解析を行っており、患者の理解を深めることを試みています。

 

ゼミ生との一コマ
ゼミ生との一コマ
 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

将来世代のことを、人々がどのようにしたら深く考えるようになるかという問題について、研究をしています。具体的な克服案はまだ見出されていません。また、致命的な意思決定や社会決定をしない研究をしようとしています。

 

 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「描画の統計的画像解析と臨床的利用の検討」

詳しくはこちら

 

 影響を受けた研究者は?

繁桝算男

東京大学 名誉教授/慶應義塾大学 社会学研究科 心理学専攻

【統計学】博士論文の指導を受けた先生です。


高木修

関西大学 名誉教授

【社会心理学】社会心理学で師事し、論文の指導を受けた先生です。


小嶋外弘(故人)

同志社大学 名誉教授

【経済心理学、消費者心理学】2004年に亡くなられましたが、経済心理学、消費者心理学の指導を受けました。

 


 どこで学べる?

「社会心理学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

21.教育・心理」の「87.教育心理学、社会心理学、実験心理学」

 


 先生の授業では

社会心理学、経済心理学、心理学基礎演習、心理学演習、社会心理学実習などを担当しています。実習では、実験、調査、野外観察、面接などの方法を用います。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

 

(1)シンクタンクの研究員

(2)広告代理店の営業、研究開発職

(3)大学教員

  

◆学んだことはどう生きる?

 

シンクタンク、企業の研究所、大学、銀行などで働いている卒業生は、学生時代に学んだ心理学や意思決定論や統計データの解析を役立てていると聞いています。

 

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

行動の機構 脳メカニズムから心理学へ

D.O.ヘッブ、訳:鹿取廣人、金城辰夫、鈴木光太郎、鳥居修晃、渡邊正孝(岩波文庫)

心理学の古いテキストですが、心理学の基本的観点を理論的に展開しています。



方法序説

デカルト、訳:谷川多佳子(岩波文庫)

デカルトが始めた学問の基本的態度が書かれていて、大学に入って勉強や研究をする時に参考になりました。



ニコマコス倫理学

アリストテレス、訳:高田三郎(岩波文庫)

倫理について、人間について考える時の基本的枠組みを提供しています。

 


 先生に一問一答

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

台湾。食べ物がおいしいので。

 

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

ジャズが好きです。お気に入りはジョン・コルトレーンの『My favorite things』。

 

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『ホテル・ニューハンプシャー』

 

Q4.大学時代の部活・サークルは?

少林寺拳法、美術、料理

 

Q5.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

 大学病院でベッドを組み立てるアルバイトをしました。